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ブリュンヒルド(ぶりゅんひるど) 概要 シンフォニアに登場した鎧系の体防具。 登場作品 + 目次 シンフォニア 関連リンク ネタ シンフォニア 鎧の一種。防御力+50。 イセリア人間牧場突入時にクラトスが装備している。 ゼロス死亡時に再加入した際にはそのまま装備している。 分類 鎧 備考 - 防御力 50 属性 - 買値 - 売値 1 特殊効果 - 装備者 クラトス 入手方法 他 イセリア人間牧場突入時のクラトス初期装備 ▲ 関連リンク ▲ ネタ ブリュンヒルド(独:Brünhild)とは、ゲルマンの英雄譚に登場する女性の事。 ▲
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【種別】 霊装 【元ネタ】 Wikipedia-グングニル 【初出】 とある魔術の禁書目録SS 第7話 【解説】 ブリュンヒルド=エイクトベルが完成を目指す、北欧神話中最強の武器の名を冠する霊装。 形状としては3メートルサイズの槍。 白兵戦で使うには大きいが、馬上・船上で使うにはやや小さい代物。 材質はトネリコの樹と、入念に熱処理した炭素鋼。 木製の柄に蛇のように複数の金属刃が絡みついており、突き刺すことも重さで潰すことも考慮されている。 その『帯に短し襷に長し』な外見により、明確な用途や戦法を一目で看破できない。 あくまで『主神の槍(グングニル)』として設計された霊装だが、 ブリュンヒルド自身が持つ『聖人』の特性が割り込みを掛けてきており、 気付かない内に『ロンギヌスの槍』の要素が入り込んでいる。 オーディンのみが扱えるとされる『最後のルーン』を世界そのものに刻むことで、 世界中の霊的・魔術的な力をこの槍に集める効果を持ち、完成さえすれば無尽蔵な力の供給を可能とする。 使用にはワルキューレの資質を必要とするため、現状ではブリュンヒルドにしか扱えない。 ブリュンヒルドによれば、グングニルの有名な伝承である、 『投げれば標的を必ず貫く』・『どんな武器でも防げない』などの一見して統一性の無い能力は、 人にとって美味しい能力を後付けした結果であり、この槍の本質を見えなくしてしまっている。 彼女は、「全てのバラバラな能力は、天変地異に対する恐怖心の発露である」と解釈しており、 故にこの槍は、ありとあらゆる天候を完璧に操ることを可能とする。 また、大剣バルムンクを砕いた伝承から、『武器破壊』の能力も持ち、 これを受ければ七天七刀ですら砕かれてしまう。 その能力はすさまじいの一言で、 神裂火織と対峙した際には70%の出力であったにもかかわらず、 落雷・マグマ・氷・塩害・暴風・爆炎・洪水などを自在に引き起こした。 原理としては、北欧神話の世界を形成した要素である、 『炎と氷と霜の魔術的記号』を組合わせることで様々な現象を生み出している。 3つの記号の組合わせという十字教の『三位一体』思想が意図せず反映された形であり、 神裂はそこを突破口とした。 ブリュンヒルドが敗れた後、解析されて新たな火種になる事を恐れた神裂によって破壊され、 連鎖崩壊した『最後のルーン』共々廃棄された。 【関連】 →主神の槍(グングニル) →主神の槍(グングニル)【オティヌス】
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ブリュンヒルドとジライヤ その1 ブリュンヒルドとジライヤ その2 ブリュンヒルドとジライヤ その3 ブリュンヒルドとジライヤ その4
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08/09/20(土)00 52 15 No.12725758 ■トライアル・ロワイヤル■ 白兵艦ブリュンヒルド&カルディア 戦艦自体が白兵戦を敢行しようという前代未聞のコンセプトの元に建造された戦艦 尤も本トライアルに参戦する艦船群に於いては似たようなコンセプトを持つ艦も多く 彼らと良い勝負を繰り広げる事になるだろう事は想像に難くない ブリュンヒルドは先端に堅牢な衝角を持つ上下の区別無い砲弾型の戦艦で 光学兵器を主体に武装を施され、規模に比べて非常に軽量である その軽量さを生かした機動性で戦場を縦横無尽に駆け周り 敵艦隊中で全武装を展開する様は「咲く」と言うに値する壮麗さを持つ 実は衝角の奥に大口径のプラズマバーナー「ゼノビアの騎士」が装備されているのだが 威力に比例してデメリットも数多く、あまり使用されることは無い アンドロイドであるカルディアの持つ扇子が振り下ろされる時 ブリュンヒルドは己を賭して戦う剣となるのである ∥関連事項 ⇒トライアル・ロワイヤル ⇒艦艇 ⇒所属不明
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とある公園の中央に、一人の戦士が佇んでいた。その戦士は女であった。つまりは女戦士、もしくは女武者、戦乙女と呼ばれる存在である。 彼女は三つ編みにされた金糸のような頭髪に、最低限の部分だけを守るように拵えられた軽装の兜を被っていた。それも両耳部に翼のような飾りが付いているデザインの物であった。 両椀部には手首から二の腕までを銀色の籠手が覆っていた。手は素手でであった。 胴部は、喉から胸のラインをなぞり、バスケットボールのような巨大な乳房を三分の二ほど覆っていて、背中は赤い紐が交差状に通って胴を固定していた。 また、鳥の爪を模した金の飾りを付けられた箇所以外厚みがなく、胸の形を扇情的に、さらにはその尖端の形すらもはっきりと浮かばせていた。 その事から直垂(ひたたれ・鎧の下に着る下着のような物。)の類を付けてないことが見て取れる。 腰部は胴部と同色の素材で作られ、コルセットにも似ていた。また、白い背中が胴を固定している赤い紐越しに見て取れた。また、鳩尾から股間までを金の飾りの付いたネクタイ状の前掛けが下がっていた。 そして、その胴には翼を切り取り赤い帯に縫いつけ、ぐるりと腰に巻いた腰裳(こしも)と一体化していた。これもまた鎧と同じ素材と思われる。 裾は太股(ふともも)までで、脚部鎧の間から白い太股が覗いていた。腰裳は肌にぴったりと張り付く素材のようで、臀部の形がうっすらと見て取れた。それもまた、胸部と同じくらい扇情的であった。 両脚部は白銀の脛当、大腿部には黒褐色の傘状に開いた立挙、ヒールの高い金属靴。そのような三つのパーツで構成されたロングブーツを履いていた。 これが、彼女の――ブリュンヒルドの戦鎧である。全体的に黒褐色の割合が多く、過剰なまでに露出が高い。 おおよそ実用性がないように思われるが、これは英霊の装備である。 零距離からの重機関銃のフルオート射撃でも傷一つ付かず、生中(なまなか)な魔術は弾き返す、神秘の一品である。 鎧を着ると言うことは、“戦”をすると言うことである。 彼女の精神(こころ)は鎧を着た瞬間、スイッチを押すように変った。同居人と食事をし、笑い合い、日常を謳歌していたブリュンヒルド(ブリュン)から、目の前が誰であろうとも、屠り、排除する、ブリュンヒルド(戦乙女)に。 彼女はジライヤを待っている。準備があるから、五分だけ待ってくれと言う“お願い”を受け取り待つことにしたのだ。 その間、彼女は公園に音消しと人払いの術式(ルーン)をかけていた。無論、ジライヤだけは公園に来ることができるように調整してある。 ブリュンヒルドは、思考に没頭していた。 (彼はやはり善人だ。こんな身勝手な願いを聞き届けてくれる。そして、わたしは悪人だ。自身の利益のために彼を利用している。 この戦いでわたしは変われるだろうか? 口調を変え、性格を変えた。だが、英霊であるわたしに変えられるのは表面のみだ。だから、こうやって、何かに没頭すると、 “私はこんなことでいいのかしら、こんな嫌な奴をやっていたら嫌われてしまうわ”……まただな……。 変ったのはうわっ面だけだ。今のわたしはまだあの頃の心のままだ。もし、今の状態で恋をしたら、彼が何かの間違いで浮気をしたら嫉妬に狂って殺してしまう。 そんな“病み”を抱えている。このような事ではシグルドに合わせる顔がない。彼もまた、このようなわたしに会いたくないだろう。…………ああ、思考がどんどん後ろ向きになっていく。速く来ないものか……) ブリュンヒルドがそう思い、息を吐いた瞬間――公園が淀んだ殺気に満たされた。 (ッ………………! ……ふふっ、貴方はわたしの願いを誠実に聞き届けてくれる善人だ) 見えないバトンを廻すように、右手首をくるりと一周させた。 それだけで、彼女の相棒は顕現した。それは、闇のように黒く/物干し竿のように長く/矢印のように尖り/神秘の文字が刻まれ/隕鉄のように重い――槍であった。 ブリュンヒルドは己が相棒を背後の敵に向けた。先ほどよりさらに黒く、重い、コールタールのように粘つく殺気を放っていた。 「……意外と速かったな」 「いや、何、遅いくらいじゃわい」 まったく正反対の言葉を吐き、同じくらいの質量を持った殺気をぶつけ合った。 ジライヤの格好は先ほどより変っていた。黒ジャケットが使い古された忍装束に、ショッキングピンクパンツが脚絆に変っていた。 いつもへらへらと笑い、好色な目をして覗きをしていたジライヤはもうここにはいない。鉢金の巻かれた額。その下の双眸から放たれる眼光は全てを凍り付かせるほどに鋭く、重く、冷たい。 笑顔は無貌の仮面に、呼吸は息吹にすり替わり、その頑健な肉体は放出されるエネルギーで何倍にも強く、大きく見せていた。 これが自来也。仙素道人の弟子。雷獸討伐者。義賊団首領。三竦みの死闘の勝者。そして蝦蟇忍者。 ――これが闇を生きる自来也。これが怪仙童の自来也である――! 「始めるかの?」 「始めましょう」 二人の言葉以外に音はない。風は凪ぎ、虫はなりを潜め、体重を移動させる音すらしない。 「何しに行ったか聞かんのか?」 「わたしの中では、辞世の句を考えていた、と言うことにしている」 メリッ――――――――! そんな音がジライヤの顔面から出た。憤怒の余り表情筋と頬骨が軋んだ音だった。 「あまり年上をからかうモノではないぞ」 「年上と言うなら、元女神のわたしの方が年上だな。貴方は生きて数十年。わたしの方は数百年を軽く生きている」 何時もの会話に聞こえる。会話文だけを聞けば、であるが。 声色はどこまでも固く、顔はにこりともせず、地面に至っては二人を中心に波紋が疾走し中心点では盛り上がりすらある。無論これは二人の殺気で起こったことである。 二人は数泊置き、言った。 「合図は何でじゃ?」 「これで」 そう言って取り出したのは、コイン――五百円硬貨である。 コインの合図で西部劇風に『抜きな、どっちが速いか勝負だ』をしようという腹である。 「ええじゃろう。どちらが弾くかの?」 「貴方で」そう言い放ち、コインをジライヤに向けて弾いた。コインの煌めきすら視認できない――指弾である。 それをあっさり指で挟み受け止めた。今まで、この公園で起きたことは、常人には踏み越えられない領域のものばかりであった。 覗きに然り、大地の波紋に然り、殺気に然り。 そして、二人が武器を取り、戦いの音楽を鳴らすという事は今まで以上の事が公園に起きるというわけである。 互いに一撃のみと定めているが、その一撃でどのような被害が二人に公園に起きるか。最早想像すらできない。 二人は今公園の中心から端に向けて歩いている。そしてぎりぎり端まで歩き――止まった。 互いに向けていた背を返し、向き直る。公園の少ない光量でも、英霊の目にははっきりとその肢体が見えている。 二人は同時に構えた。 ブリュンヒルドは、胸が地面にすれすれになるまで、左肩をやや前に出すように前屈させた。そして己が愛槍を引き絞られた右腕、添えられた左手で、三メートルの槍をピタリと固定した。 ロングブーツに包まれたしなやかな両足は、エネルギーを圧縮し、爆発の瞬間を待つロケットのように、全エネルギーを前に押し出すべく待機していた。 ジライヤは、威嚇するように肩口に反射防止用の墨を塗られた忍者刀を大きく掲げた。そして左手を刃先に添え、ピタリと切っ先を敵に固定した。 その姿はさながら顎を大きく開き、威嚇する蛇のようであった。太く優れた筋肉によって構成された両足は、前後に開き、ブリュンヒルドと同じようにエネルギーを圧縮し、前に進むべく待機していた。 二人の体はガンマンの銃弾で、大地は発射台にして拳銃である。 「………………………」/「…………………………」 互いに無言。ここから先は言葉は要らず。ただ前に流れるだけである。 ブリュンヒルドは、筋力B/耐久D/敏捷A/魔力A幸運Eの我が身に全力を傾け。 ジライヤは筋力D/耐久D/敏捷B/魔力B/幸運Aの我が身を信じ抜き。互いに無言を貫く。 ジライヤの左足が音を出した。足袋を穿いた左足の親指でコインを上空に弾いたのである。 赤い瞳が/黒い瞳が――大きく見開かれる。 女の体が/男の体が――存在感すらもエネルギーに変え、朧になる。 高く、高く弾かれたコインは放物線を描き、限界位置で失速――落下――接触。軽い音が公園に響き渡った ――――――ちぃん――――――――。 「キァぁッ!」/「カァぁッ!」 爆音! 互いの足が接触していた部分が放射状に崩れた。 怪音! 切り裂かれた大気が啾啾と哭いた。 高音! 互いに接触した武器が想定外のエネルギーを与えられ、悲鳴を上げた。 擦過音! すれ違った足から、土の溶ける音と繊維の千切れる音を出した。 「……………………………」/「……………………………」 互いに無言。微動だにしない。“戦い”が軍配がどちらに上がったのかわからない。 パッと、左肩に血の花が咲いた。咲かせたのはジライヤであった。しかし、少しばかり痛みに顔を顰めただけで、その顔に喜色を浮かべていた。 「わたしの負けか……。貴方の手癖の悪さを侮っていたな……」 そう言いはなったブリュンヒルドの胸は外気に晒され、谷間からジュースや菓子類が零れていた。つまりは、鎧がないのである。 もっとも消し飛んだのでもなければ、粉々にされたわけではない。紐が断ち切られて、ブリュンヒルドの前方の金網に引っ掛かっていた。 「まったく……勝負は一撃、と自分でいっておきながら、二撃繰り出すとは……なあ……」 ジライヤの攻撃は紐を断ち切った時点で一撃。それ以上の攻撃は二回目の攻撃に換算される。しかし、ブリュンヒルドの声に怒りは含まれていない。 「ワシは忍者でもあるし、盗賊でもあるからのう。卑怯卑劣は当たり前。正々堂々真っ直ぐに勝負なんてほとんどしたことなかったわい」 そう、言い放ち立ち上がった。蝦蟇油を塗った左肩からはもう出血はない。 ジライヤはそうやって生きてきた。仙素道人の弟子として育てられるも、義賊団の首領になった。そう言う生き方を選んだ。善人であるジライヤは騎士や武士のように、正々堂々お立ち会いといった勝負をできず、仲間の為、民の為に卑怯と呼ばれることもした。 だから、ブリュンヒルドに卑怯者と言われようと、友人の体に刃を突き立てることなど出来なかった――善人であるが故に。 だから、策を編んだ。出来る限り友人を傷つけず、気絶させるに留める方法を考えそれを実行した。 まず、いったん離れて相手に考える時間を与えた――これにより相手は何か考えてしまう。特にブリュンヒルドのように、自分の在り方に嫌悪して、変える為に思考を廻してしまう相手は。 次に考え事をしている最中に、殺気を放ちながら帰る――これにより、相手は思考を強制的に中断させられ、また殺気によってこちらが自分を本気で殺しに来ている、と誤認させることが出来る。 三つ目に、少しばかりはなしをする――これは相手に思考を廻す時間を与えない為である。無論、この方法は相手が複数の事に集中できる技術を持っていたら、あまり使えない手であるが。 四つ目に、互いに真っ直ぐ突撃していく状況である――これは、コインの合図。ブリュンヒルドの性格。本気で真っ向勝負したいという気持ち。もう、後には引けにという心理状態。それらを利用したのである。 最後に運である――策としては、下中の下である自身の運を使った。自身の運のよさを信じ、槍の突撃をぎりぎりで避けたのである。 これによって左肩に軽傷を負うだけに済み、忍者刀は刀身が粉になるだけで済んだのである。 「胸に色々入れていたから、貴女の柄での一撃は軽減できた……。カフッ……。しかし、これが刃での一撃だったら、生存フラグが立って、ケフッ、重傷を負っても死なずに済んだのかもしれない……」 ブリュンヒルドは両膝を付き、激しく咳き込んだ。 「…………地味に痛くて、気絶できない…………」ガフゥ! 本来なら胸骨への一撃の衝撃は、心臓を震わせ、心停止若しくは、不整脈などを起こし、ブリュンヒルドを気絶させたのかもしれない。しかし、巨大な乳房と谷間に入れておいた様々なもの(お菓子、缶ジュース、香水、財布、etc.)が鎧となりダメージを軽減させていた。 それによって、気絶することも出来ず、地味に響く疼痛に悶えている事になったのである。 「……貴方を巻き込んだ罰だ。この痛みは甘んじて受けよう。カハッ! そして、助平に出血大サービスだ。わたしを自由にするが良い……」 そういい、仰向けに倒れた。気絶はしておらず、出血もなく、ただ胸の痛みに渋面を浮かべていた。 じゃり、じゃり、と靴音をたてジライヤが近づいてきた。 (ああ、それでいい……。ジライっち。君は善人過ぎる……。ここで、わたしを陵辱でもして、その困った性分を治しておけ……) ブリュンヒルドは眼を閉じ、受け入れる覚悟をした。そして、すぐ近くで足音が止まり胸に手が伸ばされた。 (……………………………) ただ、黙ってそれを受け入れる。胸の谷間に何かが、すさまじいスピードで通過した。そして、吹き清められた谷間に蝦蟇油が垂らされたのである。 「なっ!」 見開いたブリュンヒルドの眼にふわりと落ちるしろい手ぬぐいが映った。そして、ジライヤは後ろを向き立ち去ろうとした。 「どうして……?」 ブリュンヒルドが疑問に思うのも無理は無い。助平が目の前の半裸の女に手を出さないのだから。 「痛みに呻く女を抱く趣味はないのう」 「……抱いて、と言えば? どうする」 「愛の無い契りは御免こうむる」 至極、真面目な口調で言った。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・フフフ、あはははははは!!!」 ブリュンヒルドは爆笑した。笑いながら咳き込み、痙攣しながらも笑い続けた。 「どうした?」 「やはり、ジライっち。君は善人だ! 良い人だ! 最っ高だ! あはははははは!!」 「ワシは帰る。おやすみ・・・・・・」 足を進めたジライヤに。 「ああ、さようなら! また会おう! あはっ、あはははははは!!」 まだ笑い転げている、ブリュンヒルドに向かって踵を返し、こっち向け、と平坦な声で言った。 ブリュンヒルドはその言葉に従い、ジライヤの方を向くと同時に額に鋭い痛みが走った。 「あいたっ!」 でこピンである。 「笑いすぎじゃ。たわけ」 「ごめんなさい」 ブリュンヒルドは笑うのをやめ、素直に謝った。 今、ブリュンヒルドは一人である。掛けられた蝦蟇油で胸の痛みは治まり、鎧も回収し、水で胸を清めているのがちょうど終わったところである。 ブリュンヒルドは鎧姿から普段着に戻ろうとした。自由に衣服の着替えが出来るのはサーヴァントとしての基本機能である。 服を顕現し、帰ろうとした所で、止まった。下を見る。胸の谷間が見える。足下が見えないのは何時ものことである。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・?」 しかし立ち止まった理由はこれではない。 ――ブラジャーである。つけた覚えの無いシックな感じの黒ブラジャーが見えた。そしてその外側に来た覚えの無い服が見えた。 メリーの普段着を黒くしてブリュンヒルドの体格に合わせたかのような服。アンティーク・ドールのような服。 黒のゴスロリである。 下腹部にも、違和感を感じシルクまみれのスカートを捲り上げると黒いショーツが見えた。これも穿いた覚えが無い。そもそも穿いていない。 公園に一人たたずむ、黒ロリ女・・・・・・とてつもなくシュールである。 恐ろしき、神秘の早業。どのようなことをすればここまで見事にすり返られるのか、全くの不明である。 ブリュンヒルドは、自分の服がすり返られたのだと、理解した。そして、ブリュンヒルドはこの贈り物を素直に受け取った。 「・・・・・・良い人だ。このような可愛らしい服まで、プレゼントしてくれるとは。これを着てシグルドに会うのも良いかもしれないな」 恐ろしいまでのポジティブシンキングで、この恐ろしい服を着て家に帰ることにしたのである。 《FIN》 《蛇足》 酔っ払いは腰を抜かし、やけにボロボロになった家主は硬直し、シグルドは気絶した事は蛇足である。なお、シャツとショートジーンズは畳まれて自室においてあった。 なあ、この事件は黒ロリ事件として衛宮邸の闇に葬られた。 さらに蛇足だが、エウロペはこの服を気に入り、着て出かけようとすると、全力でとめる孫と揉みあいになる様子が、衛宮邸の玄関で見られた。
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Last Update 2012/08/18 21 58 26 《ブリュンヒルド》 属性 黄 移動色 ●●●● 攻撃 15 能力 [戦闘時]発動戦闘支援カードに精霊族モンスターを使用できる。攻撃成功時に(戦闘支援モンスターの攻撃値×2%)で相手モンスターを消滅させる。 レア VR 種族 精霊 耐久 17 数少ない消滅攻撃能力持ちモンスター。 しかしながら戦闘支援として精霊族が必要なことから先制や避け無効などと併用できないこと、育成を考慮しなければ消滅確率は30~40%程度に収まってしまう微妙さかげんがなんとも言えない。 《キノーピⅡ世》であらかじめ相手の先制を潰してから侵略するのも手だが、手間の割に結局確率依存という不安定さはやはり使いづらいの一言。 むしろ移動値が4と高いうえに耐久が17あることから《スタッブスポーク》の餌としての活躍に期待できる。 精霊族一覧はこちら。 モンスターコレクションTCGとのコラボカード。 ▲ 名前 コメント
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バレンタインブリュンヒルド(Valentine s Brynhildr) イラスト:suhu ★ Unique 「ワルキューレ・ブリュンヒルデ。あなただけの贈り物となり、帰還したのだ。」「・・・・・・」「…喜ぶはずってカオスが言ってたんだけど…」 ストーリー 2月14日はバレンタインデー! アレスこいつ…オレのチョコレートをみては全部自分の物だと全部食っちゃうなんて。 残ったのはこの大きい箱ひとつだけだけど、まさか空ではないよな。結構重たい。空ではないようだ。何が入ってるか確認してみようかな。 …ブリュンヒルデ、そんなところで一体何をしているんだい?オレのチョコレートは? ステータス ランク コスト Lv.1 Lv.40 AP DP HP TP AP DP HP TP ★ 57 5945 635 7270 22335 11795 635 18190 44955 SWITCH ITEM 効果 バレンタインベアのぬいぐるみ APが 6% 増加する バレンタインラビットのぬいぐるみ 相手のスキル攻撃のダメージに対して 15% をカウンターで与える 固定オプション DPが 560、クリティカル発動確率が 4% 増加する 取得方法 バレンタイン限定召喚、バレンタインカードパッケージ販売
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とある公園の中央に、一人の戦士が佇んでいた。その戦士は女であった。つまりは女戦士、もしくは女武者、戦乙女と呼ばれる存在である。 彼女は三つ編みにされた金糸のような頭髪に、最低限の部分だけを守るように拵えられた軽装の兜を被っていた。それも両耳部に翼のような飾りが付いているデザインの物であった。 両椀部には手首から二の腕までを銀色の籠手が覆っていた。手は素手でであった。 胴部は、喉から胸のラインをなぞり、バスケットボールのような巨大な乳房を三分の二ほど覆っていて、背中は赤い紐が交差状に通って胴を固定していた。 また、鳥の爪を模した金の飾りを付けられた箇所以外厚みがなく、胸の形を扇情的に、さらにはその尖端の形すらもはっきりと浮かばせていた。 その事から直垂(ひたたれ・鎧の下に着る下着のような物。)の類を付けてないことが見て取れる。 腰部は胴部と同色の素材で作られ、コルセットにも似ていた。また、白い背中が胴を固定している赤い紐越しに見て取れた。また、鳩尾から股間までを金の飾りの付いたネクタイ状の前掛けが下がっていた。 そして、その胴には翼を切り取り赤い帯に縫いつけ、ぐるりと腰に巻いた腰裳(こしも)と一体化していた。これもまた鎧と同じ素材と思われる。 裾は太股(ふともも)までで、脚部鎧の間から白い太股が覗いていた。腰裳は肌にぴったりと張り付く素材のようで、臀部の形がうっすらと見て取れた。それもまた、胸部と同じくらい扇情的であった。 両脚部は白銀の脛当、大腿部には黒褐色の傘状に開いた立挙、ヒールの高い金属靴。そのような三つのパーツで構成されたロングブーツを履いていた。 これが、彼女の――ブリュンヒルドの戦鎧である。全体的に黒褐色の割合が多く、過剰なまでに露出が高い。 おおよそ実用性がないように思われるが、これは英霊の装備である。 零距離からの重機関銃のフルオート射撃でも傷一つ付かず、生中(なまなか)な魔術は弾き返す、神秘の一品である。 鎧を着ると言うことは、“戦”をすると言うことである。 彼女の精神(こころ)は鎧を着た瞬間、スイッチを押すように変った。同居人と食事をし、笑い合い、日常を謳歌していたブリュンヒルド(ブリュン)から、目の前が誰であろうとも、屠り、排除する、ブリュンヒルド(戦乙女)に。 彼女はジライヤを待っている。準備があるから、五分だけ待ってくれと言う“お願い”を受け取り待つことにしたのだ。 その間、彼女は公園に音消しと人払いの術式(ルーン)をかけていた。無論、ジライヤだけは公園に来ることができるように調整してある。 ブリュンヒルドは、思考に没頭していた。 (彼はやはり善人だ。こんな身勝手な願いを聞き届けてくれる。そして、わたしは悪人だ。自身の利益のために彼を利用している。 この戦いでわたしは変われるだろうか? 口調を変え、性格を変えた。だが、英霊であるわたしに変えられるのは表面のみだ。だから、こうやって、何かに没頭すると、 “私はこんなことでいいのかしら、こんな嫌な奴をやっていたら嫌われてしまうわ”……まただな……。 変ったのはうわっ面だけだ。今のわたしはまだあの頃の心のままだ。もし、今の状態で恋をしたら、彼が何かの間違いで浮気をしたら嫉妬に狂って殺してしまう。 そんな“病み”を抱えている。このような事ではシグルドに合わせる顔がない。彼もまた、このようなわたしに会いたくないだろう。…………ああ、思考がどんどん後ろ向きになっていく。速く来ないものか……) ブリュンヒルドがそう思い、息を吐いた瞬間――公園が淀んだ殺気に満たされた。 (ッ………………! ……ふふっ、貴方はわたしの願いを誠実に聞き届けてくれる善人だ) 見えないバトンを廻すように、右手首をくるりと一周させた。 それだけで、彼女の相棒は顕現した。それは、闇のように黒く/物干し竿のように長く/矢印のように尖り/神秘の文字が刻まれ/隕鉄のように重い――槍であった。 ブリュンヒルドは己が相棒を背後の敵に向けた。先ほどよりさらに黒く、重い、コールタールのように粘つく殺気を放っていた。 「……意外と速かったな」 「いや、何、遅いくらいじゃわい」 まったく正反対の言葉を吐き、同じくらいの質量を持った殺気をぶつけ合った。 ジライヤの格好は先ほどより変っていた。黒ジャケットが使い古された忍装束に、ショッキングピンクパンツが脚絆に変っていた。 いつもへらへらと笑い、好色な目をして覗きをしていたジライヤはもうここにはいない。鉢金の巻かれた額。その下の双眸から放たれる眼光は全てを凍り付かせるほどに鋭く、重く、冷たい。 笑顔は無貌の仮面に、呼吸は息吹にすり替わり、その頑健な肉体は放出されるエネルギーで何倍にも強く、大きく見せていた。 これが自来也。仙素道人の弟子。雷獸討伐者。義賊団首領。三竦みの死闘の勝者。そして蝦蟇忍者。 ――これが闇を生きる自来也。これが怪仙童の自来也である――! 「始めるかの?」 「始めましょう」 二人の言葉以外に音はない。風は凪ぎ、虫はなりを潜め、体重を移動させる音すらしない。 「何しに行ったか聞かんのか?」 「わたしの中では、辞世の句を考えていた、と言うことにしている」 メリッ――――――――! そんな音がジライヤの顔面から出た。憤怒の余り表情筋と頬骨が軋んだ音だった。 「あまり年上をからかうモノではないぞ」 「年上と言うなら、元女神のわたしの方が年上だな。貴方は生きて数十年。わたしの方は数百年を軽く生きている」 何時もの会話に聞こえる。会話文だけを聞けば、であるが。 声色はどこまでも固く、顔はにこりともせず、地面に至っては二人を中心に波紋が疾走し中心点では盛り上がりすらある。無論これは二人の殺気で起こったことである。 二人は数泊置き、言った。 「合図は何でじゃ?」 「これで」 そう言って取り出したのは、コイン――五百円硬貨である。 コインの合図で西部劇風に『抜きな、どっちが速いか勝負だ』をしようという腹である。 「ええじゃろう。どちらが弾くかの?」 「貴方で」そう言い放ち、コインをジライヤに向けて弾いた。コインの煌めきすら視認できない――指弾である。 それをあっさり指で挟み受け止めた。今まで、この公園で起きたことは、常人には踏み越えられない領域のものばかりであった。 覗きに然り、大地の波紋に然り、殺気に然り。 そして、二人が武器を取り、戦いの音楽を鳴らすという事は今まで以上の事が公園に起きるというわけである。 互いに一撃のみと定めているが、その一撃でどのような被害が二人に公園に起きるか。最早想像すらできない。 二人は今公園の中心から端に向けて歩いている。そしてぎりぎり端まで歩き――止まった。 互いに向けていた背を返し、向き直る。公園の少ない光量でも、英霊の目にははっきりとその肢体が見えている。 二人は同時に構えた。 ブリュンヒルドは、胸が地面にすれすれになるまで、左肩をやや前に出すように前屈させた。そして己が愛槍を引き絞られた右腕、添えられた左手で、三メートルの槍をピタリと固定した。 ロングブーツに包まれたしなやかな両足は、エネルギーを圧縮し、爆発の瞬間を待つロケットのように、全エネルギーを前に押し出すべく待機していた。 ジライヤは、威嚇するように肩口に反射防止用の墨を塗られた忍者刀を大きく掲げた。そして左手を刃先に添え、ピタリと切っ先を敵に固定した。 その姿はさながら顎を大きく開き、威嚇する蛇のようであった。太く優れた筋肉によって構成された両足は、前後に開き、ブリュンヒルドと同じようにエネルギーを圧縮し、前に進むべく待機していた。 二人の体はガンマンの銃弾で、大地は発射台にして拳銃である。 「………………………」/「…………………………」 互いに無言。ここから先は言葉は要らず。ただ前に流れるだけである。 ブリュンヒルドは、筋力B/耐久D/敏捷A/魔力A幸運Eの我が身に全力を傾け。 ジライヤは筋力D/耐久D/敏捷B/魔力B/幸運Aの我が身を信じ抜き。互いに無言を貫く。 ジライヤの左足が音を出した。足袋を穿いた左足の親指でコインを上空に弾いたのである。 赤い瞳が/黒い瞳が――大きく見開かれる。 女の体が/男の体が――存在感すらもエネルギーに変え、朧になる。 高く、高く弾かれたコインは放物線を描き、限界位置で失速――落下――接触。軽い音が公園に響き渡った ――――――ちぃん――――――――。 「キァぁッ!」/「カァぁッ!」 爆音! 互いの足が接触していた部分が放射状に崩れた。 怪音! 切り裂かれた大気が啾啾と哭いた。 高音! 互いに接触した武器が想定外のエネルギーを与えられ、悲鳴を上げた。 擦過音! すれ違った足から、土の溶ける音と繊維の千切れる音を出した。 「……………………………」/「……………………………」 互いに無言。微動だにしない。“戦い”が軍配がどちらに上がったのかわからない。 パッと、左肩に血の花が咲いた。咲かせたのはジライヤであった。しかし、少しばかり痛みに顔を顰めただけで、その顔に喜色を浮かべていた。 「わたしの負けか……。貴方の手癖の悪さを侮っていたな……」 そう言いはなったブリュンヒルドの胸は外気に晒され、谷間からジュースや菓子類が零れていた。つまりは、鎧がないのである。 もっとも消し飛んだのでもなければ、粉々にされたわけではない。紐が断ち切られて、ブリュンヒルドの前方の金網に引っ掛かっていた。 「まったく……勝負は一撃、と自分でいっておきながら、二撃繰り出すとは……なあ……」 ジライヤの攻撃は紐を断ち切った時点で一撃。それ以上の攻撃は二回目の攻撃に換算される。しかし、ブリュンヒルドの声に怒りは含まれていない。 「ワシは忍者でもあるし、盗賊でもあるからのう。卑怯卑劣は当たり前。正々堂々真っ直ぐに勝負なんてほとんどしたことなかったわい」 そう、言い放ち立ち上がった。蝦蟇油を塗った左肩からはもう出血はない。 ジライヤはそうやって生きてきた。仙素道人の弟子として育てられるも、義賊団の首領になった。そう言う生き方を選んだ。善人であるジライヤは騎士や武士のように、正々堂々お立ち会いといった勝負をできず、仲間の為、民の為に卑怯と呼ばれることもした。 だから、ブリュンヒルドに卑怯者と言われようと、友人の体に刃を突き立てることなど出来なかった――善人であるが故に。 だから、策を編んだ。出来る限り友人を傷つけず、気絶させるに留める方法を考えそれを実行した。 まず、いったん離れて相手に考える時間を与えた――これにより相手は何か考えてしまう。特にブリュンヒルドのように、自分の在り方に嫌悪して、変える為に思考を廻してしまう相手は。 次に考え事をしている最中に、殺気を放ちながら帰る――これにより、相手は思考を強制的に中断させられ、また殺気によってこちらが自分を本気で殺しに来ている、と誤認させることが出来る。 三つ目に、少しばかりはなしをする――これは相手に思考を廻す時間を与えない為である。無論、この方法は相手が複数の事に集中できる技術を持っていたら、あまり使えない手であるが。 四つ目に、互いに真っ直ぐ突撃していく状況である――これは、コインの合図。ブリュンヒルドの性格。本気で真っ向勝負したいという気持ち。もう、後には引けにという心理状態。それらを利用したのである。 最後に運である――策としては、下中の下である自身の運を使った。自身の運のよさを信じ、槍の突撃をぎりぎりで避けたのである。 これによって左肩に軽傷を負うだけに済み、忍者刀は刀身が粉になるだけで済んだのである。 「胸に色々入れていたから、貴女の柄での一撃は軽減できた……。カフッ……。しかし、これが刃での一撃だったら、生存フラグが立って、ケフッ、重傷を負っても死なずに済んだのかもしれない……」 ブリュンヒルドは両膝を付き、激しく咳き込んだ。 「…………地味に痛くて、気絶できない…………」ガフゥ! 本来なら胸骨への一撃の衝撃は、心臓を震わせ、心停止若しくは、不整脈などを起こし、ブリュンヒルドを気絶させたのかもしれない。しかし、巨大な乳房と谷間に入れておいた様々なもの(お菓子、缶ジュース、香水、財布、etc.)が鎧となりダメージを軽減させていた。 それによって、気絶することも出来ず、地味に響く疼痛に悶えている事になったのである。 「……貴方を巻き込んだ罰だ。この痛みは甘んじて受けよう。カハッ! そして、助平に出血大サービスだ。わたしを自由にするが良い……」 そういい、仰向けに倒れた。気絶はしておらず、出血もなく、ただ胸の痛みに渋面を浮かべていた。 じゃり、じゃり、と靴音をたてジライヤが近づいてきた。 (ああ、それでいい……。ジライっち。君は善人過ぎる……。ここで、わたしを陵辱でもして、その困った性分を治しておけ……) ブリュンヒルドは眼を閉じ、受け入れる覚悟をした。そして、すぐ近くで足音が止まり胸に手が伸ばされた。 (……………………………) ただ、黙ってそれを受け入れる。胸の谷間に何かが、すさまじいスピードで通過した。そして、吹き清められた谷間に蝦蟇油が垂らされたのである。 「なっ!」 見開いたブリュンヒルドの眼にふわりと落ちるしろい手ぬぐいが映った。そして、ジライヤは後ろを向き立ち去ろうとした。 「どうして……?」 ブリュンヒルドが疑問に思うのも無理は無い。助平が目の前の半裸の女に手を出さないのだから。 「痛みに呻く女を抱く趣味はないのう」 「……抱いて、と言えば? どうする」 「愛の無い契りは御免こうむる」 至極、真面目な口調で言った。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・フフフ、あはははははは!!!」 ブリュンヒルドは爆笑した。笑いながら咳き込み、痙攣しながらも笑い続けた。 「どうした?」 「やはり、ジライっち。君は善人だ! 良い人だ! 最っ高だ! あはははははは!!」 「ワシは帰る。おやすみ・・・・・・」 足を進めたジライヤに。 「ああ、さようなら! また会おう! あはっ、あはははははは!!」 まだ笑い転げている、ブリュンヒルドに向かって踵を返し、こっち向け、と平坦な声で言った。 ブリュンヒルドはその言葉に従い、ジライヤの方を向くと同時に額に鋭い痛みが走った。 「あいたっ!」 でこピンである。 「笑いすぎじゃ。たわけ」 「ごめんなさい」 ブリュンヒルドは笑うのをやめ、素直に謝った。 今、ブリュンヒルドは一人である。掛けられた蝦蟇油で胸の痛みは治まり、鎧も回収し、水で胸を清めているのがちょうど終わったところである。 ブリュンヒルドは鎧姿から普段着に戻ろうとした。自由に衣服の着替えが出来るのはサーヴァントとしての基本機能である。 服を顕現し、帰ろうとした所で、止まった。下を見る。胸の谷間が見える。足下が見えないのは何時ものことである。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・?」 しかし立ち止まった理由はこれではない。 ――ブラジャーである。つけた覚えの無いシックな感じの黒ブラジャーが見えた。そしてその外側に来た覚えの無い服が見えた。 メリーの普段着を黒くしてブリュンヒルドの体格に合わせたかのような服。アンティーク・ドールのような服。 黒のゴスロリである。 下腹部にも、違和感を感じシルクまみれのスカートを捲り上げると黒いショーツが見えた。これも穿いた覚えが無い。そもそも穿いていない。 公園に一人たたずむ、黒ロリ女・・・・・・とてつもなくシュールである。 恐ろしき、神秘の早業。どのようなことをすればここまで見事にすり返られるのか、全くの不明である。 ブリュンヒルドは、自分の服がすり返られたのだと、理解した。そして、ブリュンヒルドはこの贈り物を素直に受け取った。 「・・・・・・良い人だ。このような可愛らしい服まで、プレゼントしてくれるとは。これを着てシグルドに会うのも良いかもしれないな」 恐ろしいまでのポジティブシンキングで、この恐ろしい服を着て家に帰ることにしたのである。 《FIN》 《蛇足》 酔っ払いは腰を抜かし、やけにボロボロになった家主は硬直し、シグルドは気絶した事は蛇足である。なお、シャツとショートジーンズは畳まれて自室においてあった。 なあ、この事件は黒ロリ事件として衛宮邸の闇に葬られた。 さらに蛇足だが、エウロペはこの服を気に入り、着て出かけようとすると、全力でとめる孫と揉みあいになる様子が、衛宮邸の玄関で見られた。
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某月某日、午後六時、とある児童公園にて。 「やあ、ジライっち」という、そんな気軽な声をジライヤは尻に捻り込むような衝撃と共に受けた。そして落ちた。 地面に。さらに言うなら二メートルほどの高さから尻餅をつき、再度ジライヤの尻(尾てい骨と直腸)にダメージを受けた。 「…………………………!!!」 声もでない痛み。何故かジライヤの脳裏に薔薇が散った光景が浮かんだ。 と、そんな男としてぎりぎりの状態になりながら、尻を両手で押さえ呻いていた。 ちなみに着ているのは、最近のお気に入りであるショッキングピンクカラーの短パンに闇夜にとけ込む柄のジャケットである。 下半身がそんなに目立っては上を地味な柄にするのは意味がないのであるが、そこは本人の趣味である。 ファッションに、どうしてもこれ以外着たくない、と主張する人もままいる。 ジライヤはぶるぶると震えながら立ち上がり、自分のかわいい尻を襲った暴徒に逆襲すべく振り向いた。まだ尻は押さえていた。 「……なんじゃ、デカ乳尻羽娘ではないか」 そこに、人気のない公園に居たのは一人の女であった。 流れるような金糸の髪に付けられた、翼を模したバレッタ。神の血を引く者特有の赤眼。恐ろしいほど自己主張している、押し上げられたシャツに包まれた巨大な乳房。 うっすらと割れた腹筋が見える腹。右は膝まで、左を股間部位ぎりぎりまで大胆に露出したGパンを穿いているのは、肉付きの良い腰としなやかな足。 それらのパーツの持ち主はやはりと言うべきか、美女であった。極上とも言うべき白皙の美女であった。 余談ではあるが、彼女の胸に関して、某腹黒は『私って並です……』とコメントし、某ツインテールは『……………』と黙秘権を行使、 某赤髪は、『え、え~と…………。そ、そうだ! 肩こり対策グッズを買いに行こう!と、それぞれコメントを返した。 「そのあだ名は語呂が悪過ぎやしないか? もうちょっとわたしみたいにフレンドリーなあだ名をだな」 【例:セドナ→セドにゃん。衛宮士郎→赤髪くん。プテサン・ウィ→ウィっち。エル・シド→パンダ。etc……】 セクハラなあだ名を憤怒するまでもなく、眉を顰めるわけでもなく、 自身のセンスを自信満々に言うことから。容姿と同じく彼女は常人とは感性も違うらしい。 「なんてことするんじゃ、男の尻を攻めるとは! ワシをせめていい場所は布団の上だけじゃ! 美女限定で!」 怒りの声を上げながら、再度セクハラをかますジライヤ。最後の部分だけは譲らないつもりだろう。込めた魂が違った。 最早、筋金入りの助平である。そもそも、わざわざ住処から遠くまで出歩き、風呂屋の覗きに適したポイント探しから、利用客層(若い子限定)、さらには発見された場合の逃走ルートまで調べ上げているのだから、 最早筋金ではなく筋超合金である。 「ククク、クスクス、いやいや悪かった。声をかけても気付いて貰えなくてね。ついつい、強硬手段に出てしまった。平にご容赦を」 しゃなりとそんな音が立つくらい優雅に金糸の髪を揺らし頭を下げた。ついでに胸を派手に揺れた。どうやらブラジャーの類は身に付けてないようだ。 彼女のこういった服飾の着付けに対して、同居人(女性のみ)は口を酸っぱくして『つ・け・ろ』と再三言っているのだがあまり効果はないようである。 彼女の主張は『きつい』『高い』『特注しないとない』『そんな高い物を何着も買わせるのは悪い』といったものである。 家主である少年としては意地でも着けて欲しいと心の中で思っていた。 「フンッ、まったく」 それで気を許したか、若しくは派手に揺れた乳房で気を許したか。兎に角、ジライヤの声はいつもの声色に戻っていた。 「で、なんのようじゃ? お前さん。そんな物騒な得物を持ち出しおって」 そう言って、ジライヤが指を向けたのは一本の槍であった。 長さ三メートル近い/材質不明の黒色/勝利のルーン/矢印にも似た穂先。 ――それは槍であった。無銘の歩兵槍(スピア)。しかしその重量は常人が振るうどころか、持ち上げることすら困難な質量を有している。 これらのキーワードを聞けばちょっと北欧神話や、それらから派生した物語をかじった者ならわかる事だろう。 神性を剥奪された戦乙女、空を駆る翼を持ちし者。眠り姫の原典。愛憎の果てに愛した者を殺した乙女。 その名は―――――――― 「ブリュンヒルド、だ。『お前さん』と言う三人称もいいが、ここには二人しかいないから、名前で呼んでくれ。愛称はブリュンだ。ぶりゅっちでもいいぞ」 「ブリュンで呼ぶ……」さすがにそんなあだ名で人を呼ぶのは嫌らしい。ちなみにこんな遣り取りも十回を超えている。 「で、何のようじゃ? ワシは忙しいのじゃぞ。(覗きに)」 「君に用があってね。こうして訪ねてきたと言うわけさ」 自分が三人称で呼ぶのはかまわないらしい。都合のよい事だった。 「? 何のようじゃ? ワシに用など……マスター(ゾォルケン)どのから言伝か? いや、それなら念話で伝えられるか」 ジライヤは考えを巡らすが、真相にはたどり着けそうにない、そうした空気を感じ取ったか、ブリュンヒルドは口を開き言った。 「いやいや、用があるのはわたし自身で、個人的な理由からだ」 口元をにまにまと歪めながらそう言った。 「? ますます訳がわからん。お主に用を作らせた憶えはないがのう……」 「これからその“用”を話すから、とりあえず一緒に覗こう」 そう言い、ブリュンヒルドは上を、先ほどまでジライヤが立っていたブランコを指差した。 「覗くのは、いっこうにかまわんが………………どうした? 上らんのか?」 ブリュンヒルドは上れないわけではない。ブランコの何倍の高さを持つビルでも駆け上れる足を持っているからだ。 先に上らないのには訳があった。 「……これがラブコメの世界なら【ニュートンのリンゴは不味い】と言う事実と必然性により、わたしは君を股間蹴りで無理矢理上へ、上らせなければならない。……でゅー・ゆー・あんだーすたん?」 ブリュンヒルドの格好は下はともかく、上はシャツのみだ。もしジライヤより先にブランコの上に上ったらシャツの裾からその巨大な乳房の下部、もしかしたら乳首すら見えてしまうかもしれない。 で、あるからそんなトリビア知識を使った脅迫でジライヤに理解させたのである。 「…………………」 ジライヤは無言で従った。ちなみにニュートンも万有引力も、そのリンゴが不味いことは聖杯に与えられた知識で知っていた。 ブリュンヒルドはジライヤが上ったのを確認すると、彼が振り返るよりも早く宙を跳び、絶妙な体重移動で髪、衣服の乱れ、足音一つ無くブランコの鉄柱の上に降り立った。 to be continude. the next second.
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清涼な大気に公園は包まれている。その公園の中央に位置するブランコの鉄柱の上には今、一組の男女がいる。 男は168センチメートルの短身ながらも長年の鍛錬によって、高い密度を秘めた筋骨を持っているショッキングピンクパンツの中年男。 ――蝦蟇使いの義賊。自来也(ジライヤ)である。 女は金糸の髪を風に流し、165センチメートルの体躯をシャツとGパンで包んでいる。100オーバーの魔乳。20代前半くらいの超グラマラス美女。 ――天翔る戦乙女。ブリュンヒルドである。 そんな出自も性別も在り方も違う男女が夜の公園で、しかもブランコの鉄柱の上に立っていた。 そんな少しばかり非日常的な光景もジライヤの一言で崩れた。 「う~~む…………やはりあの娘が乳と尻と腰のバランスが一番に良いのう」 やっていることは、彼の生態となっている“覗き”(生命の洗濯)であった。おまけに、ブリュンヒルドの方も一緒に覗いている。 さらに言うなら、彼らは覗きをするのに自身の超視力と魔術を使っていた。 ジライヤは遠見の妖術で、ブリュンヒルドは遠見のルーンで。 神秘の無駄遣いである。某ツインテールはキレるかもしれない。 「あの娘は、まだ上半身の鍛え方が足りないね。重量物を使った鍛錬をおすすめするね。……あっ」 覗きの途中、ブリュンヒルドはふと思い出したかのような声を出した。 「何じゃ?」声だけを向ける。 「先ほどのことなのだが、少々言いたいことがあったのを思い出したのだ」 「何じゃ? 言うてみい」視線はまったく外さない。 「ああ、わたしの事をデカ乳尻羽娘と言ったが、それは誤りだ」 そんなことを極めて真剣に言った。 「は…………? でかいじゃろう。真逆、小さいとはいわんじゃろう」 少々どもりながら言った。それに、彼女が貧乳なら某ツインテールは虚無である。 「ああ、すまない言葉が足りなかった。わたしよりも乳と尻が大きい友人がいるのだから、わたしだけをデカ乳尻羽娘と呼ぶのは誤りだと言いたかったんだ。あと、羽娘はまあいい」 ちなみに、自分の胸が周りと比べて大きいと言うことは承知である。 「乳は兎も角、尻がお主より大きいのは、誰じゃったかのう?」 「エウロペだ。彼女のヒップはわたしより大きい。しかし、絶妙なラインと持ち上がりぐあいで、素晴しい尻である」 まるで、自分の母親が美人であることを自慢する子供のように、目を輝かせて言った。 (さすがにおなごであるお主が言うのはどうかと思うんじゃが……) 同時刻、衛宮邸でアステリオスに、エウロペは膝枕で耳掃除をしていた。そしてクシャミをした。……後の事は語る必要のない話である。 気を取り直してジライヤは次に移る。 「ま、まあエウロペの尻が素晴しいことはわかった。さすったことがないから、参考になったのう。感謝する(孫がヤバイからのう)」 その言葉に、うむとだけ頷きジライヤの返答を待った。 「乳の方はわかるぞい。プテサンじゃろう。あやつの乳は確実に、ブリュン、お主より大きいんじゃ。カップ一つ分ぐらいわなあ」 「その通りだ。しかしその返答は少し言葉が足りない。ウィっちはわたしより七センチメートル背が高い。ウエストも四センチメートル多く、わたしより八センチメートルバストがあるからカップが一つ多い。と答えるべきだ」 立て続けにそうジライヤの台詞を修正した。ちなみにバスト計算式も聖杯から与えられていた。 「うんうん、そう答えなければ誰か勘違いしてしまうじゃろうなあ。ああ、それにしてもじゃ」 「? 何かな」 「いやなに、プテサンの身長百七十二センチメートル、体重六〇キログラムなのに、なんであんなに大きいのかのう、と思ってな」 「ああ、それは簡単な質問だ。『こーんな簡単な答えなのか。ハハッ!』と言ってしまいたくなるくらいに簡単だ」 「おお、何じゃそれは。早う教えてくれんかのう」 子供のように興奮して縋り寄るジライヤ。好奇心は人よりも強いらしい。 「フフフ………あわてなさんな。早い男は嫌われるぞ」 と、そこで一息入れ。 「彼女に聞いたところ、『宙に浮いた逸話を持っているから』だそうだ。だから常に体がほんのチョッピリ浮いているんだ。で、あるから見た目より軽いんだ」 「……はあ……何じゃか、無理矢理な答えじゃのう」 あまりその答えに満足してないようだ。 「まあ、どんなに考えようとも答えが見つからない問題があるものさ。特に女性の体重に関してはな」 パチリとジライヤに向かってウインクした。ジライヤの鼓動が少し速まった。 ちなみにブリュンヒルドがプテサンの体重の事を話したとき、プテサンは熊太郎に向かって派手にクシャミをした。 熊太郎はそれに怒ることなく、取り出したティッシュで鼻をちーんしてあげた。いい話である。 そこからはたわいもない会話が続いた。ピサールがメタボ警告を受けたとか、某腹黒がまた黒くなったとか、熊太郎は本当に熊なのか、もしかしたらミュータントかもしれない。 だったら最後の台詞はコレに決まりだな。『クマー(私を見て金ちゃん)』『クマー(これが私の魂。これが私の知性)』『クマー(私は生きていた)』とか。 まったく取り留めなく、無秩序に話の花を開いていた。 ちなみに、単語の意味もネタも聖杯から与えられて知っていた。 「………………………」 「………………………」 しばらくして、会話がぷつんと途切れてしまった。そんな状態が時計の秒針が半周するくらい続いたとき、ジライヤが静かに口を開いた。 「のう、こんな猥談をしに来たわけじゃないじゃろう。“用”とはいったい何なんじゃ」 ブリュンヒルドは一度フッと笑い、おもむろに乳房をいきよいよく上下に揺らし、谷間から落ちてきた缶珈琲を二本キャッチした。 そして片方をジライヤに向かって投げた。 投げられた缶珈琲はかなりの速度を持っていたが、ジライヤはブリュンヒルドの目をじっと見たまま、無骨な指二本で挟みキャッチした。 人肌に温まった缶珈琲をジライヤは「あんがと」だけ言い、ぐびりと飲んだ。 二人とも数秒で飲み干し、空き缶を公園の隅にあったゴミ箱に向けて投げた。空き缶は放物線を描かず真っ直ぐにゴミ箱の縁に辺り、一度上空へ舞い上がった後、二本とも中に落ちた。 ブリュンヒルドは反響音が無くなるのを待ってからその赤い唇を開いた。 「わたしと本気で一手戦え」 その言葉はジライヤの耳に届いてから、大気に溶けていった。 To be continued.